ファッション

ファッションにぜんぜん気がいかないひとはかっこよくないが、ファッション、ファッション…とそれしか頭にないひとはもっとかっこわるい。

このふたつ、一見反対のことのようで、じつは同じ態度を意味している。
他人がそこにいないのだ。あるいは、他人にじぶんがどのように映っているかという、そういう想像力の働きが、欠けているのだ。

ひとにはそれぞれ印象というものがある。印象がいいというのは、ファッションで
ももちろんほめ言葉のひとつだ。清潔な感じがするとか、さっぱりしているとか、あ
るいはダサイとか、暗いとか、かったるいだとか。

たとえば同じ医者でも、白衣のときにはどことなくおっかない感じがするが、平服
で往診に来ると、ふっと身近に感じて、なんでも相談できそうな感じがする。豪華な
椅子に腰かけているときと、患者と同じクルクルまわる機能的な椅子に腰かけている
ときとでは、安心感も違う。服装ひとつで印象はころつと変わってしまうのだ。

「印象」の反対の言葉をご存じだろうか。「表現」という言葉だ。英語で表すとそれ
がよくわかる。「印象」は英語でインプレッション。外界が心の内(イン)に刻印され


る(プレス=押す)ことを、インプレッション(印象)という。反対はイクスプレッ
ション、つまり心の内を外(イクス)へと目に見える形で押し出す(プレス)こと、

つまり「表現」を意味する。「印象」は内に刻みつけられたもの、「表現」は外に押し
出されたもののことなのだ。


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